豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「はい」
孝志は愛想良く頷いた。
「ああ、やっぱり。わたし、ファンなんです。舞台も見に行きました」
女性が目を輝かせて、そう言った。
「ありがとうございます」
孝志は笑顔で答える。
「あの……握手していただけませんか。それと……できればサインも」
「いいですよ」
光恵は後ろに下がって、顔を隠すように下を向いた。
こんなとき、自分はどういう風に振る舞えばいいんだろう。
「恋人」らしくいては、駄目なんだよね。
友達? それとも仕事仲間?
いや、マネージャーとかの方がいいかな……。
考えていると、光恵は次第にむなしくなってくる。
やっぱり、無理してでも、海外がよかったかなあ。
孝志と女性が楽しく話しているのをぼんやりと見ていると、カップルの男性の方が、光恵に話しかけて来た。
「今日は観光ですか?」
光恵は戸惑う。
仕事って言ったほうがいい?
「あの……」
光恵が困っていると、孝志が「観光です」と横から返事をした。