豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「そうですか。いいところですよね。僕らは新婚旅行できました」
男性が楽しげにそういいながら、「誰だろう」というような顔で光恵を見る。女性も光恵の顔を遠慮がちに見てきた。
「もしよければ、写真を一緒にとらせていただけませんか?」
女性が言う。
「僕と一緒に取るのは、かまいません。でも彼女はちょっと遠慮していただけませんか?」
孝志が言うと、女性が「はあ」と悲しげな表情を浮かべる。
「すみません。彼女は大切な人なので、顔をみんなに見せたくないんです」
そこで唇に指をあて「ここでのことは、秘密でお願いしますね」と笑った。
「あっ、そうですよね。すいません、気がきかなくて」
「いいんですよ、じゃあ、一緒に写真とりましょう」
光恵はブルーをバックに、三人の写真を撮った。
カップルと別れて、砂が敷き詰められた道をのぼる。日差しはじりじりと熱いが、東京のように不快ではない。光恵はロングワンピースの裾についた砂を払ってから、車に乗り込む。孝志がエンジンをかけると、車内がすぐに冷えて来た。
「ねえ、孝志」
「うん?」
「ごめんね」
孝志は驚いた顔で光恵を見る。「どうしたの?」
「だって、さっき言ったこと、事務所に怒られるし……そもそも、わたしが変な意地を張らないで海外に行けば、こんなこともなかったんだもん」