豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
がやがやとうるさい居酒屋の中で、光恵は思考がまとまらない。
孝志がいなくなる。
舞台に、いなくなる。
「次はミツが一年前に書いてくれた『夜明けの月』を再演するつもりだ。ミツには、これまでの台本を大幅に手直ししてもらわなくちゃならない。あいつの役を他の役者がやれるように。キャラクターを少し変えたいんだ。台詞も考えなくちゃな」
三池はそう言って、軽く溜息をついた。
「あいつはいつか出て行くだろうって思っていた。もっと大きな舞台を踏める奴だ。でもいざ抜けるとなると、あいつだからこそ、いろいろ問題だな……。次の劇団の顔を、探さなくちゃならないかもしれない」
三池がまじめな顔で言う。
「劇団の今後のあり方を考える必要があるな」
「……ですね」
光恵は味のしないビールを一口飲んだ。
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孝志は本当にいなくなった。
連絡も、顔を見せることもなかった。
消えてしまったのだ。