豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「その言い草も、なんだそりゃ!」
光恵はもう一度、さらにきつく孝志を蹴り上げた。
「いてて、ゴメンよぉ。でもさ、家には帰れないんだよぉ。見つかんのも嫌だし、家に箱買いしたキットカットがあるんだもん」
「は、箱買い???」
「そう、お得なんだ。大人買いってやつ?」
「あんた……お金の使いかた間違ってるよ」
光恵はぐったりと座りこんだ。少々考えの足りない男だとは思ったけれど、ここまでとは……。
「あの箱を空っぽにするまで、捨てるなんてできない」
孝志は腕を組んで、決意にみなぎった顔を見せる。
「ミツに変なこと、絶対しない! 約束するからさ。お願いだよ〜」
孝志は再び頭を下げた。フローリングの床におでこをこすりつけている。
光恵は深く溜息をついた。
なんだか似たような理由で、前も家に帰らないって言ってたな……。
進歩のない奴。
「わかった。でもこの家では、わたしがルールだからね! 破ったら即追い出す」
「おっけー」
孝志は軽くそう言うと、自分のドラマを見始めた。
「このドラマ、面白いよ。おすすめだから、ミツもここで一緒に見ようよ」
肉厚な背中を眺めながら、どんでもないことを引き受けたかも……と、光恵は既に後悔を始めていた。