豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
2
無事に夜が明けた。
ブルーのカーテンを開くと、早朝の日差しが部屋に入り込む。
ラグの上で丸まっていた孝志が、うむむ、と変な声を出した。
光恵は既に着替えをすませ、運動に行く準備は万端だ。
「孝志、起きて。運動行くよ」
「ういいいいい」
孝志が目をこすりながら身体を起こし、タプタプのお腹をぽりぽり掻いた。光恵はそれを見てげんなりする。
「わたし、朝食の支度するから、孝志は着替えて、顔洗って」
「う……ん」
孝志はのっそりと立ち上がり、ふらふらと洗面所へと入って行った。
前回よりも明らかに体重が増えているのに、期間は短い。かなりストイックにやらないと、プレミアまでに身体を元に戻せないだろう。
光恵は手早くミキサーに野菜を入れていく。緑黄色野菜のスムージー、カロリーがあがるので砂糖も牛乳もなし。そのかわりにバナナを入れた。これで朝のランニングはもつはずだ。
「できたー」
洗面所から孝志が出て来た。
見るとジャージのフードをすっぽり冠り、サングラスをかけている。完全に不審者だ。
「あつっ苦しい」
光恵はサングラスを取ろうと手を伸ばした。
「だめだって。顔がばれたら、ヤバいんだから」
孝志は有名人っぽい発言をしたが、光恵は「そんなわけないって」と一蹴した。
「かけてもいい。今の孝志じゃ、絶対に誰も気づかないよ」
「えー、そうかなあ」
「試しにサングラスを外して走ってごらん」
光恵は意地悪くそう言った。