豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
結局、孝志はサングラスを取り、フードを脱いだ。
ぱんぱんにふくれたほっぺたと、どっしりとしたシルエット。
あはは。
絶対わかんない。
光恵は準備体操をする孝志を眺めながら、笑いそうになるのをぐっと堪えた。
日中の残暑は厳しくても、早朝は秋の気配を感じる。空気はひやりと冷たく、透明だ。
「じゃあ、走ろう」
光恵は孝志に声をかけてスタートした。
孝志は、どしんどしんと、身体を揺らしながらゆっくりと走り出した。光恵はその姿を見て「デジャブ?」と首を傾げる。一年前にもこんな光景みた気がする……。
案の定、すぐに顎があがり、ふうふう言いだした。
「ミツ、苦しい」
喘ぎなら孝志が言う。
「それは孝志が溜めた脂肪のせい」
「まずは……はあはあ、ウォーキングでも……はあはあ」
「ねえ、自分がピンチだって分かってる? あと一ヶ月でそのぽってりとした身体を元通りにしなくちゃなんないんだよ?」
「はあはあ……だよねえ……」
てろてろと身体を揺らしながら、孝志は走り続けた。