豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「オーディション?」
「そう、新しい子を入れようかって」
「へえ、俺も行きたいなあ?」
「行く?」
光恵は気軽にそう訊ねた。
「いいの?!」
孝志が声をあげる。
「さあ、いいんじゃない? でもみんな爆笑かもね」
「なんでだよ」
「だって、その身体だよ。今や大スター様が、その格好。いい話のタネ」
そういうと孝志は「む」と詰まった。それから首をぶんぶん振って「いかない!」と言いきった。
「そ、懸命ね」
光恵は鞄を肩にかけ、玄関でサンダルを履いた。
「行ってきます。運動メニューこなしてね。無駄な外出はしないこと。間食しないこと。あと、部屋に一人でいるからって、いろいろのぞき回ったりしないでね。もしそんなことしたら、即追い出すから!」
「わかったよ〜。早く帰って来てね」
クリームパンのような手を、ひらひらと振る。
光恵は少々不安な気持ちになりながらも、アパートを後にした。