豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
光恵は玄関扉を指差した。
「今すぐ出てって!」
「なんで? 引き出し開けたりしてないよ!」
「この家では、わたしがルールって言ったでしょ!」
「えー」
「やる気のない人はいらないの!」
光恵は腕を組んで、孝志を睨みつけた。
「ごめん、ミツ」
孝志がうなだれる。
「ミツの言う通りにするからさ、出てくのは勘弁して」
孝志の目が、こころなしかウルウルしている。
光恵は溜息をついた。
「お菓子が他にあるなら、全部出して。没収」
孝志はちらっと、壁にかけてあるジャージのポケットを見る。光恵が無言でポケットをさぐると、両方から三個ずつ出て来た。
「さよなら、Have a break」
孝志がつぶやいているのを聞きながら、光恵は自分のバッグにキットカットをしまった。
「わたしだけがやる気を出しても仕方ないんだよ。結局は自分自身。痩せたいんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、がんばって」
光恵がそう言うと、孝志は丸いおててを、ぎゅっと握りしめた。