豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「おかえり」
孝志が腹筋をしながら声をかけた。


「ただいま」
光恵はそんな孝志の姿を見てほっと胸をなでおろす。


よかった、今日は食べてない。


「誰か合格した?」
「うん、多分一人、合格すると思う」
「へえ、会いたいな」
「いつか会えるよ」


光恵は洗面室で着替えて、化粧を落とした。


「ミツ、今日のごはん何?」
「野菜スープと、鶏ささみのソテー」
「ふうん」


孝志はそういうと、ぐったりとうなだれ、お腹を撫でた。


「お腹減った?」
「今はそれほどでも。でも心が満たされない。気がつくとチーズのことを考えてる」
「チーズって……。何か他のことをしたら? 本を読むとか、気がまぎれることを」
「うーん、ミツ、なんか面白いことしてよ」
「は? わたしはお笑い芸人みたいなこと、できません」
「そっかー、そうだよねー」


孝志は、つまらなそうに胡座をかいた。


「じゃあ、後で一緒に散歩にでもいく?」
光恵がそういうと、孝志はぱあっと顔を輝かせる。そして元気に「うん」と頷いた。

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