豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「あった、コレ」
光恵は1リットルパックを手に取った。
孝志は「スーパーなんて久しぶりだ」ときょろきょろ見回していた。
が、ふと、孝志の動きが止まった。
「……チーズ」
孝志がつぶやく。
光恵は「しまった」と顔をしかめた。
乳製品売り場には必ずあるチーズ。
魔のチーズ。
「孝志、帰るよ」
光恵は孝志のシャツを引っ張った。
「ねえ、ミツ……。ちょっとだけなら、いいんじゃないかな」
「……」
「ほら、一口、とか」
「……」
「ストレスも身体に良くないだろう?」
まるで子犬のような目をしてくる。
「じゃあ、このキャンディーチーズ買ってあげる」
光恵は仕方なく、キャンディのように個別包装されているチーズの袋を、手に取った。この一週間、孝志は頑張っている。ちょっとぐらいのご褒美なら大丈夫だろう。
「ありがとーーーーーっ、ミツ、大好き!!!!!」
孝志はがばっと、光恵を強く抱きしめた。