豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


すっかり作品の世界に没頭していた。
一区切りついて顔をあげると、誰もいない。


光恵がコンピュータの時計を見ると、時刻は既に深夜二時を過ぎていた。


「あれ、孝志……」


光恵の心に不安がこみ上げてくる。いくらなんでも遅すぎる。部屋の一角につくられた孝志の荷物置き場には、ぽんと彼の財布が放り出されていた。


光恵は慌てて部屋を出た。秋の夜風が肌に冷たい。


どうしたんだろう。
どこいったんだろう。


孝志が道に迷って途方に暮れている姿が思い浮かんだ。お財布がなかったら、ちゃんと家にも帰れない。まさか、囲まれて袋だたきとか、ありえるかも……。世の中、デブに冷たいし。


そう思うと光恵は後悔の念で胸が張り裂けそうになった。
あんなに邪険に扱わなきゃよかった。


深夜にも関わらず、駅近くには酔ってる大学生やサラリーマンがたむろしていた。コンビニやゲームセンターを見てまわったが、どこにもいない。


どうしよう。
本当にどうしよう。
孝志に何かあったら……。


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