豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ねえ、何か食べてる?」
光恵は孝志のぽこっとふくらんだ頬を指差した。
「あ、コレ? チーズ」
「!? チーズ? いつ食べたの?」
「え? 家出る前だけど」
そういえば、キャンディーチーズ、食べてた。
「まさか、まだ、口に入れたまま?」
「そう。食べちゃうのもったいないだろ?」
光恵は思わず顔をしかめた。
「キモ!」
「きもいとか、言わないでよぉ。貴重な脂肪分なんだぞ」
「えー、やっぱり気持ち悪いよ」
光恵は笑いながら、扉を開けて、部屋にはいった。
部屋に入る孝志の背中を見ながら、光恵は「ありがとね」と言う。孝志は背中を向けたまま「うん」と答えた。
「歯、磨こ」
光恵は明るくそう言うと、洗面所に行って鏡を見た。
眼鏡をかけた自分の顔。まだびっくりしたような顔をしてる。
人差し指で、自分のおでこを触った。
さっき、どさくさにまぎれて、おでこにキスしたよね、アイツ。
光恵はくすっと笑うと、歯ブラシを取り出した。