豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「俺もそろそろ、次の仕事の準備しなくちゃなぁ」
孝志はそういうと、起き上がって自分の鞄の奥底から、一冊の台本を取り出した。
「ドラマ?」光恵が訊ねると「映画」と答えが返ってくる。
「読ませてよ」
「だめー」
孝志は舌をべーっと出してから、光恵のベッドを背もたれに読み始めた。
孝志が集中して読み出したので、光恵も再びコンピュータの画面に視線を戻す。しばらく無言で自分の作品を読み続けていると、突然、
「わっ」
という声が上がった。
「どうしたの?」
光恵が見ると、孝志は台本を手に固まっていた。
「ねえ、ちょっと」
「……」
「どうしたの? ねえ、読ませてよ」
光恵は孝志の側に寄って、手から台本を取り上げた。それでも孝志は身動き一つしない。真っ白な壁を見つめつづけている。
光恵は首を傾げて、台本を読もうとしたが、すんでのところで孝志に奪われた。
「何にびっくりしたの? すっごい気になるじゃない」
「……駄目」
「どうしても?」
「だって……いや、でも……」
孝志はぶつぶついいながら、再び台本を読み出した。
なんだよ、もう。
気になるなあ。
光恵は仕方ないと首をすくめてから、再びダイニングテーブルへ戻った。