豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
大きな鏡の真ん前で、誰かが転がっているのが見えた。
いや、一瞬で誰かわかる。
あの丸さ。
孝志だった。
「おお、まだ、いた。おつかれ」
光恵は気軽に声をかけ、自分のロッカーへと向かった。
「あった、これこれ」
光恵はノートを手に取ると、勢い良くロッカーを締める。振り返ると、まだ孝志は転がったままだ。光恵は首を傾げた。
なにしてんの?
「どうした?」
光恵は孝志の側に行くと、しゃがみ込んだ。
「ああ、ミツぅぅぅ」
蚊の泣くような声で、孝志は返事をした。
よく見ると顔色は真っ青で、唇はかさかさだ。相変わらずまんまるだったが、心なしか頬がこけている。
「具合悪いの?」
光恵は心配になって、孝志のおでこを触ったが、熱はないようだ。
「……お腹へった……」
孝志は今にも泣き出しそうな顔になった。