豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
一週間後の夜、光恵が部屋で一人ぼんやりとしていると、チャイムが鳴った。
志賀が来たということは、遅かれ早かれ孝志がここに来ると、想像できたのだろう。光恵が扉をあけると、孝志が満面の笑みを浮かべて「ミツ!」と立っていた。
「何しにきたの?」
光恵は、平静にと念じながら、そう言った。
「えー、ミツと走ろうと思って。この何日間で、なんかまた顎が丸くなった」
孝志は困った顔で、自分の頬をなでる。確かに、シャープな印象が既に薄れて来ていた。
「いつまで、こんなこと続けるつもり?」
「え!?」
孝志がびっくりしたような顔をし、光恵の目を凝視する。光恵はくじけそうな自分を奮い立たせて、口を開いた。
「体型が崩れてくるたびに、助けを求めにくる訳? 役を演ずるのと同じように、自分の生活をコントロールして、体型を維持することも仕事なんじゃないの?」
孝志は黙り込んだ。笑っていた目は、真剣なものに変わった。
「いい加減、大人になりなさい」
光恵の心臓は、なぜかばくばくとして、声が震えないようにするのが精一杯だ。
「大人の男に、なるのよ」