豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
九ヶ月たった。
あの日から九ヶ月。
でも光恵の暮らしはほとんど変わらない。相変わらずこの仕事一本でいけるわけじゃなく、バイトと掛け持ちしている。いつまでこのままでいられるだろう。そんな不安が心を占める日は少なくなかった。
それとは正反対に、孝志は躍進を続けていた。映画の撮影が終わり、今はゴールデンタイムのドラマに出ている。好評のようだ。
ただし、光恵は一度も彼の作品を見たことがない。
どういう訳か見られないのだ。
テレビに彼が映ると、光恵はあわてて消してしまう。
あのキス。
唇の端に軽く触れるようなキス。
孝志にとってはたいしたことではないだろうが、あのキスのせいで光恵は心が落ちつかない。
馬鹿みたい。
もう会うこともないだろうに……。