豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ちょっと、聞いてくれ」
三池が立ち上がり、声を張り上げた。ざわついていた劇団員達が静まり、一斉に三池の方に注意を向けた。
「次の公演なんだが、実は、孝志が帰ってくる」
わあっと言う声が、部屋いっぱいに広がった。
光恵は思わず、息をのむ。
冷えたグラスを握りしめた。
「孝志がどれだけ変わったか、見てやろうじゃないか」
三池が笑う。
「やったー、すっげーうれしい!」
隣で輝が目を輝かせている。
「やっと一緒の舞台に立てるんだ! ミツさん、楽しみですね」
「……うん」
光恵はやっとのことで頷いた。
「おい、ミツ!」
遠くから三池が手招きしている。光恵は立ち上がり、込み合う座席をぬって三池の側まできた。
「ミツ、ここ座って」
三池が隣の席を指差す。光恵は素直に座った。
「次、また書けるか?」
三池が訊ねた。
「次ですか……?」
「そう、ついこの間一本書いたばっかりでハードだけど、新しい作品が欲しいんだ」
「……そうですね」
光恵の頭は混乱していて、考えがまとまらない。
「向こうの事務所が、孝志が出るのだから特別なものを用意してくれって言ってる。書けるか?」
三池はアルコールが入って、テンションも高く、光恵に言った。
「やってみます」
光恵は静かに頷いた。
「よし、オッケー。今回は向こうの事務所が最初に目を通す。彼らや孝志を、あっと驚かせるような作品を書いてくれ」
「はい」
光恵は頷いた。