豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「なんか食べれば?」
光恵がそう言うと、孝志は眉を吊り上げた。
「ミツがあんな場面書くから、ダイエット中!」
「でもこんなにぐったりするようなら、食べなくちゃ」
「人ごとのように言うなよー」
孝志は抗議するように、身体を丸めて、背を向けた。
光恵は困って溜息をついてしまった。
「ねえ、いつもはどうやって身体しぼってるの?」
「食べない」
「断食?」
「うん」
「……それじゃあ、もたないでしょう?」
光恵が言うと、孝志はこちらをちらりと見て、口を尖らせた。
「これまでは割と平気だったんだけど、今回の飢餓感は……半端ない。ミツのせいだ」
それを聞いて、光恵は思わず「あんたのせいでしょ」と口に出した。
「だいたい、たかだか二週間か三週間のオフで、なんでこんなにまんまるくなっちゃうの? ひどい生活してんでしょ」
「普通だよぉ」
孝志は泣きそうな声で言った。
「普段、なに食べてる?」
「……ピザとか……。コンビニのバイトが夜の十時に終わるから、それからLサイズのピザを買って、ビールと一緒に食べるんだ。すげー幸せ。それからポテトチップスと、あとキットカット。俺、あれが昔から大好きで、ファミリーパックの大袋を一人で抱えて食べる」
光恵は呆れた。
「まさか、それを毎日じゃあないよね」
「トッピングは、ローテーション」
孝志は得意げな顔をした。