豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「一度でいいから、舞台に帰って来て」
孝志はあの約束を果たそうとしている。
でも約束を果たしたら、終わりってことだろうか。
縁が切れる、この劇団とも、それから光恵とも。
そういうこと?
席に帰っても、光恵はしばらくぼんやりとしていた。
「どうしたんです? ミツさん」
輝が心配そうに顔を覗き込んだ。
「……ううん、なんでもない。新しいのかいてくれって、三池さんが……」
「ほんと!!?」
輝の目が輝いた。
「わあ、すごいうれしいです。楽しみ!」
光恵は曖昧に笑って、「何書いたらいいんだろ……」と答えた。
「佐田さんが舞台の中央に立ってるだけで、なんか世界が広がる感じがしませんか?」
興奮気味にそうしゃべってから、輝は恥ずかしそうに頭をかいた。
「すみません、偉そうに」
「いいよ、別に。わかるから、その感覚」
光恵は笑った。
「野島くんの中にも、世界が見えるよ」
光恵は希望に光る輝を眺めながら言う。
すると輝は顔を赤らめ、「ありがとうございます」とにっこりとわらった。