豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「いい男の役なんか、お前にはやらん。お前はポークでいい。ポーク。豚」
光恵はけなしながら、写真を見続けた。
「恋をしたことのない、おでぶさん」
光恵は黙って、写真の孝志を見つめた。
次第に、光恵の頭の中に、新しい世界が広がって行く。
限られた空間。そうだ、キッチン。お店の厨房にしよう。そこのシェフと、その他のスタッフ。まるで定点カメラを見ているような、そんな舞台に。場面は変わらないから、キャラクターの魅力と、絶妙な台詞で、観客を引き込む。
主役は雇われシェフ。
味は確かだが、言動が少々幼い。
恋はまだしたことがないから。
光恵は目を閉じて、しばらくその世界が出来上がるのを待つ。
そして。
ホットミルクを一口飲んで、
それからおもむろに書き出した。