豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「三池の判断で、このお話を受けるとなれば、もちろん改訂いたします」
光恵はそういって、三池の顔を見た。
三池は少し考える様子を見せた。おそらく三池の頭の中には、すでにウェイトレス役を誰にするのか決まっていたのだろう。
「……わかりました。お受けいたします。皆川、できるな?」
「はい」
「でき次第、また脚本をお送りいたします」
「ありがとうございました」
志賀はにこやかに礼を言ったが、最初から断られるとは思ってもいなかっただろう。
三池と二人立ち上がり、最後に「失礼します」と言って部屋を出た。
「大きな事務所が絡んでくると、いろいろあるな」
ビルの外に出ると、三池はそういって溜息をつく。ビル風に首を縮めて、二人は歩き出した。
「そうですね、これからも口を出してくるでしょうか」
「多分、な。俺も覚悟しないと。ミツが大変かもしれないな」
「大丈夫です、これがわたしの仕事ですから」
三池は優しく笑うと「よろしくな」と言って、光恵の背中を励ますように叩いた。
地下鉄の駅へと向かう道。光恵はなるべく考えないようにした。
とにかく仕事に集中しなくちゃ。
これがわたしの仕事。
しっかりやろう。
『プライベートでも佐田と親しい』
耳に残るその言葉を振り切るように、光恵は強く首を振った。