豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


本読みは通常通り行われた。


役者はまだ役作りを手探りしている状態で、回を重ねるたびに異なるキャラクターがうまれる。光恵はそれを不思議な気持ちで眺めた。光恵の中にしか存在しない人々が、いろんな形で目の前に現れるのだ。


孝志が演じる人物。
仕事はできるが、不器用で、人の感情に疎い。
孝志は徐々にそのキャラクターを掴み始めているようだった。彼が舞台の上で演じている姿が、すでにはっきりと想像できる。


光恵は自然とその姿に惹き付けられた。自分が書いた本を、彼が読んで、演じていることに、静かな歓びを感じる。


時々、となりのゆうみは、小声で孝志に話しかける。台本を指差し、何かを訊ねている。孝志は笑顔でゆうみに返事をする。その話し方で、二人の親しさが伝わってくるようだった。


光恵は黙ってうつむいた。


この仕事に集中しなくちゃ。
しなくちゃいけないのに。


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