豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
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「あいつ、随分変わったな」
役者の一人が、言った。
稽古が始まって一週間弱。シーンごとの景色が見え始めた。光恵は手直しに追われる毎日だった。今回はバイトと掛け持ちしているので(稽古場から逃げる口実が欲しいから、というのは自分でも分かってる)、睡眠を削られ、へとへとだ。
孝志は確かに以前とは随分変わった。落ち着きが出て、自信が垣間見える。舞台を降りても、まだ舞台に立っているかのような、輝き。
「話すと、前とは変わんないようにも思うんだけどな」
「いやあ、変わったよ。やっぱり芸能人になったんだよ」
役者達が話しているのを脇で聞いていて、皆光恵のように感じているのだと安心した。
わたしが特別におかしいわけじゃない。
みんな、孝志との隔たりを感じてるんだ。
ゆうみは常に孝志と一緒にいる。頼れる人は孝志だけ、ということなのだろうか。光恵の心にあるもやもやとした何かは、あろうことか少しずつ大きくなってきている。
本当に、どうしたんだ、いったい。