豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
やだ、見たくない。
光恵は見る前から、それが何か分かる気がした。
スマホの小さな画面には、裸の男女がベッドの上にいる。
わかってる、あの映画だ。
あの……映画……。
目は映像に向けられているけれど、頭には入ってこない。
見たくない。
見たくない。
「気持ち悪い」
光恵はやっとそう言うと、そこから逃げだした。
後ろから「おい、もっと評価してやれって」という声が聞こえたが、無視した。
稽古場の外にでて、建物の脇に入りこんだ。
大きく息をして、胸の動悸を収めようと頑張る。
あれは仕事だ。
いや、たとえあの映像がプライベートのものだったとしても、光恵にはまったく関係ないことだ。
どうしたの? わたし。
少々の濡れ場で動揺するタイプでもないし、まったく経験がない少女でもないのに。
心臓がどきどきして、具合も悪い。
あいつ……練習したんだ……誰かと……。