豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ミツさん」
後ろから輝の声がして、光恵はあわてて振り返った。
「……」
「ミツさん、ごめん」
「……何が?」
「だって、あの……やっぱり、佐田さんと付き合ってたんでしょう?」
「違うわよ」
光恵は引きつった顔で、無理矢理笑顔を作る。
「でも、この舞台が始まってから、ミツさん様子がおかしいし。明らかに佐田さんを避けてるから。あの時部屋で見た二人の様子と全然違うし、別れちゃったのかなって……」
「やだ、違うわよ」
「映画の予告編も、あんなの見たくなかったでしょう? 俺、気づかずに……」
「違うって……」
「でも」
「違うって!!!」
光恵は思わず大声を上げた。
輝の顔に驚きが広がる。
「ごめんなさい、怒鳴るつもりは……本当に違うから、そんなんじゃなくて」
じゃあどうしてこんな風な気持ちになるの?
「ミツさん」
輝がそっと光恵を抱きしめる。
光恵は驚いて輝を見上げた。
「しばらくここで泣いてもいいですよ」
「え?」
「今、泣いてるから」
光恵が慌てて自分の頬を触ると、確かに濡れていた。
「わたし……」
「うん」
「もう、あの人は、わたしの知っている孝志じゃないの……」
「うん」
「それが……どういう訳か、とてもつらくて」
「ミツさん、まだ佐田さんのこと、好きなんですね」
好き?
わたしが?
「そうか……気づいてもいなかったんだ」
輝がそう言った。
でも、今、気づいてしまった。
光恵は輝の腕の中で、声を出して泣き出した。