豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
5
「ああああああ、いきたくなああああああい」
光恵はベッドの中でうなり声をあげた。
カーテンの隙間から、朝日がこぼれ、ラグの上に光の道をつくっているのが見えた。光恵は眉間に皺を寄せて、目をぎゅっと閉じる。
昨晩は飲み過ぎて、頭の中では凄まじい嵐がおこっているし、身体全部はストライキを起こしたかのように動かない。正直、これまでの人生で一番飲んだんじゃないかと思う。割と理性が効く方だし、どちらかというと飲みの席では介護役が多かった。酒に飲まれる人の気持ちがわからなかったが、今なら分かる。
酔ってるときは、忘れられるんだ。
輝を相手に、深夜まで飲んだ。
『たぶん飲んだ』が正しい言い方だ。
途中から、相手が誰かとか、今は何時だとか、すっかり飛んでしまっていたから。
稽古場に九時。今は……。
光恵は布団からのっそりと手を伸ばし、ベッドサイドのスマホの時計を確認する。
八時ちょうど。
もう支度しなくちゃいけない。
光恵は大きな溜息をついた。