君は 青空の 向こうで。
1章
「…馬鹿、みたいだ……」
白い吐息が、冬の空に霧散する。
空しくなって、白いマフラーに顔を埋めた。
そうだ。
期待なんて、しちゃいけなかった。
こんな気持ち、知りたくなんてなかった。
どうして
自覚してしまったんだろう。
こんなのは、私じゃ、ない。
「…みたいじゃ、なくて」
馬鹿だ。
眉間にしわを寄せて、そう呟いた。
くるりと後ろを向いて
大きく足を踏み出す。
自然に足が速く、大股になる。
早く
早く
この場所から消えてしまいたい。
「ちょ、おい!待てよ大高!」
背中に向って、声がする。
「まだ、話…っ」
あぁ
名前を呼ばれただけで。
甘く
心が轟く。
胸が疼く。
「…聞こえない。」
ううん
聞きたく、ないんだ。
「おい!大高…っ!!……っ、咲!!」
名前なんて、聞こえない。
声なんて、聞こえない。
歯を食いしばって
涙目になりそうな瞳を必死に見開いて
歩く。