てのひらの温度
一万円の紙幣が幾重にも重なっていた。十万…いや、十五万くらいあるだろうか。
「何この大金」
「十四万。すごいでしょ」
「アンタ危ないことしてるんじゃないよね」
こんな平々凡々そうな高校生が、十四万を、しかも現金で持っているなんて普通じゃない。おかしなクスリ売ってたり、怪しいバイトしてたりするんじゃないの。悪い疑いばかり頭によぎる。
「酷いなあ。さっき言った知り合いのホストの店で、ちょこっとバイトさせてもらっただけ。一昨日貰ったから入れっぱなしだった」
「ふーん」
「信用してない?」
「もちろん」
「ウタってすごい正直だよね」
「まあね」
くしゃくしゃと笑う少年。頭の中でスーツを造り出して重ねてみる。似合わなくはない気がするけれど、しっくりこない。
謎だよ、この男。
ホストの知り合いがいるかと思えば自身もホストらしいし、なんだかわからないが旅路を共にすることになっているし。まだ謎があるなら、いっそ全部引っこ抜いてやりたい。