てのひらの温度
「それとキミ、学校どうすんの」
「キミってさー。紺って呼んでよ。学校は行ってもつまんないし、行く意味ないからいい」
「あそ。でも部活やってるんじゃないの」
私はワイシャツから顔を出すユニフォームを指差した。紺は一瞬困ったような表情を見せたが、すぐに笑って言う。
「部活は楽しいけど、そのほかが嫌だ」
「そんなもんだよ、学校なんて」
「でしょ。それに家もかったるいし。あと俺ね、行き先もなく旅するのって憧れてたんだよね」
「躊躇もなく憧れを口に出来るって若い。羨ましいよ」
オトナになるともっと自由なんだと思ってた。檻は法律だけだ。学生の時は法律よりうんと狭い校則という檻に閉じ込められていたんだから。
でも違った。社会人、という檻は非常に狭い。おまけに常識だとか世間体だとか人付合いだとかいうステッカーまでぺたぺたと貼付けられ、身動きがとれない。