てのひらの温度
Sec.3 米粒の信頼?
目が覚めた。
部屋は暗く、ぼやけた視界は何がどうなっているのか把握出来ない。億劫に身体を半分起こし、手探りで枕元の電気をつける。ようやく状況が捉えられた。
紺は冷蔵庫の前の床に転がっている。仰向けで、服はいつのまにかスエットに変わっていた。タオルが首にかかったままだ。そういえば、お風呂入っていいかとか何とか言っていたような気がする。
視線を戻し、枕元の時計を覗くと、まだ夜中の2時過ぎだ。なんだか、私と紺はすれ違いに寝てばかりだ。出会ってから半日が経つけれど、その半分はどちらかが寝ていたんじゃないか。
こんなはずじゃなかったのにな。一人脈絡もなくぶらついて、好き勝手に振る舞って、悠々自適な旅をするはずだったのに。ノリで捨て犬を拾ってしまった気分だ。
呼吸に合わせてぺったんこの腹が上下している。腕は横に広げていて、何故か右足だけ膝を折り曲げて立てている。変な体勢でぐっすり眠る紺は、本当に無垢な仔犬のようだ。