てのひらの温度
翌朝もう一度目を覚ましても、まだ紺はすやすや寝ていた。一体どんだけ睡眠とる気なの。時刻はもう八時を回っている。たしかチェックアウトは九時だったはずだ。もう小一時間しか残っていない。
「起きろっ」
頬を抓られても起きないくらいだ。生半可なことじゃ起きないだろうと思い、勢いよく背中を蹴飛ばした。硬く締まった筋肉には、足でへこむ柔らかさもない。紺の身体が仰向けから左横向きになる。
「んん…」
やっと腕が動いた。顔をしかめている。眉間に皺が寄っている。
「起きないなら置いてくよ」
「んー…今起きる」
間延びした返事。少なくとも六時間は寝たはずなのに、余程眠いのか。ぐだぐだ手足を動かしながらも起きようとはしない。
子供みたいな紺を目の前にしていると、昨日ヘンな関係になりたくないだとか真面目に考えていたことが馬鹿馬鹿しくなる。