てのひらの温度
初めは不規則な揺れが、次第に軌道に乗り規則的なリズムになってゆく。どこか心地よい。一定の振動に身を任せる。
弁当を取り出す前に少年を一瞥すると、依然として夢の中。薄い瞼を固く閉じ口はわずかに開いている。
高校生なのだろう。真っ白なワイシャツに、グレー地に白や緑の細いチェックが入ったズボンを掃いている。ワイシャツからうっすら透けているのはユニフォームのようだ。青いスポーツバックは大きさの割に中身が少ないらしく、上部がぐにゃりとへこんでいた。
視線を戻し生気を失った食材たちに手を伸ばす。あまり美味しいとは言えないけれど、それでも胃は満足させてくれた。
手持ち無沙汰になり窓の外を眺めてみる。農地や更地と住宅地が半分ずつくらいある、たいして何の特徴もない景色だった。
今日のようにやけに晴れた日は、自然は生き生きとしているが人工の物々は表情を変えないため、どこか違和感を覚えてしまう。以前友人に話したときは「意味がわからない」と一蹴されたので、私がおかしいのかもしれない。