てのひらの温度
「………ふっ」
その様子が可笑しくて思わず笑いが零れてしまった。少年は怪訝そうな、でも気まずそうな顔で私を見ている。
急ブレーキの理由を説明するアナウンスが流れる。信号トラブルらしい。電車は線路にぽつんと停止したままになった。
少年は徐々に頭の回転が戻ってきたのか、暫くぼうっとしていたけれど、やがてスポーツバックを探り始めた。数回中身を引っ掻き回した後、焼けた手にあったのは真っ黒な携帯。
そして、携帯を一度開いて、再び目を丸くしている。
「あの、」
「はい?」
「次どの駅?」
いきなりのタメ口に少々イラッとしたけれど、そこは流すことにする。
私が次の駅名を告げると、彼は明らかな落胆の色を浮かべた。