てのひらの温度
私は何がしたいのか、何が不満なのか、何を求めているのか、どこへ行きたいのか。
なにもかもわからなすぎて、でもわかっているような気もしていて。断片を掴んで引き抜こうとしても、綿飴のようにするりと千切れて終わる。
私は私でいたい、私は私を思いのままにつくりたい。母にもアノヒトにも侵食されたくない。
そう言ったのは、私が血縁なんて切り離したかったからだ。
「死にたい、ってことはさ。生まれ変わりたいってことじゃん」
紺の口調は初めてあったときと同じくタメ口で今時の高校生らしく軽々しい。最初は少しイラッとしたけれど今は気にもならない。
私は口をつぐんでふたつの月を眺めて、紺の背中を押した感触を思い出す。
「だったら、生きればいいんだって。生きてたら、その分細胞分裂して、新しい血とか骨とか増えてって、そんでいつか今の血も骨も死んでどっか行くって」
私は、確かめようとしていたんだ。目の前で眠っている人が生きているのかを。現在進行形で生き続けているのかを。