消える前に……


俺は、

家に帰ってきてから部屋に入って行った。


やっぱりどれだけたっても、

病院から帰って来た日は、

明るくはいられない。


どれだけ病気のことを受け入れたとはいえ、

やっぱり『受け入れたくない』、

『信じたくない』という自分がいる。


でも、

前ほどは落ち込みもなくなっていた。


俺には、

朋樹や一輝がいる。


それに、

綾だっている。


だから、

大丈夫……。


そう考えている時に、

ふと俺の中で心配事が生まれてしまった。


綾に、

俺の病気のことがばれたら、

綾は俺のことをどう思うだろうか。


あんなに優しい綾もこれを知ったら

俺のもとから離れていってしまうかもしれない。


普通の病気とは違う。


一緒に作った思い出も、

何もかも忘れて行ってしまう。


そして、

自分のことも忘れてしまう。



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