消える前に……
綾を初めて抱きしめたのはいつだっただろうか?
綾に初めてキスをしたのはいつだっただろうか?
あれから、
俺は何度綾を抱きしめただろうか?
でも、
これほどまでに強く、
そして悲しく抱きしめたことがあっただろうか?
俺は、
綾を抱きしめる腕の力を強くした。
「修くん…?
どうしたの……?」
綾のその言葉に、
我に返った。
「ごめん!つい…。」
「ううん!良いよ。」
綾はそうとだけ言うと、
黙って俺の方を見つめた。
俺が話す事を問い詰めたりなどせずに、
ただ俺が話してくれるのを待っているかのように。
俺を真剣に見つめる綾の顔を見ていると、
病気のことを話したくなくなってきた。
この愛しい綾を、
手放したくなかった……。
でも俺は、
重たい口を開いた。
綾……
今まで本当に楽しかった……。
ありがとう……。