消える前に……
俺は目を開けても、
起き上がろうとしなかった。
『もう少し、このままでいたい』
そう思ったから。
俺の手を握り、
静かに寝ている綾の
寝顔を俺は見つめていた。
しばらくそのままでいると、
綾が目を覚まし
俺が見つめていることに驚いた。
「どうしたの?」
綾のその質問に
俺は答えられなかった。
「えっ!いや、
なんでもないよ!」
俺が慌てて、
赤面しているところを
綾は不思議そうに見つめてきた。
「お!やっと起きたか!
寝坊くんたち!」
そう言って、
朋樹と一輝が笑いながら
部屋に入ってきた。