消える前に……


俺は病気の進行に

気付かなかった。


いや、

全く気付くことができなかった。


いつの間にか、

大切な親友たちの記憶も、

消えてしまっていた。


この俺を知ったら、

『俺』は悲しむんだろうけど、

『俺』はこのことに

気づくこともなければ、

知ることもない。


だから、

悲しむこともできない。


でも、

俺の心にはぽっかりと

大きな穴があいたような気がして、

俺はその穴に

何があったのかも気づくこともなく、

心にあく穴が増えていくのを

見ることしかできない。


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