消える前に……


悲しい表情をする二人を見て、

俺は申し訳なく思うが、

それは初対面の人に

失礼なことを言ってしまったのではないか

という心配から

起こるものでしかなかった。







「俺ら今日は帰るわ!」



沈黙を破るようにそう言って

二人は病室を出て行った。


病室を出るとき、

俺に笑顔を向けていたが

それは心からの

笑みなんかじゃなかった。


二人のことが分からなくても、

それくらいは

俺にだってわかった。


でも、

俺は二人のことを

変わった人たちとしか

思うこともできず

心配することもなかった。



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