消える前に……


俺なんかじゃ

綾にしてあげられることは

何もないかもしれないけど……


だけど、

綾を抱きしめてあげること。


それだけは

俺にもできるから、

だから精一杯

抱きしめてあげたい……。


俺は何よりも強く

そう願った。


しばらく綾は

俺の腕の中で震えていたが、

俺の腕に包まれて

安心したのか、

綾はそっと俺から離れて

俺の顔を見上げた。


「私……修君のそばにいたい…。
修君が私のことを覚えていなくてもいい。
私を知らなくたっていい。
私のことをなんとも思わなくても、
修君が他の誰かを好きになっても……。
それでもいい……。
それでもいいから…、
私は修君のそばにいたい……。
修君の隣に座って…、
いろんなことを話したい…。
大人になっても……
ずっと……ずっと………。」



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