消える前に……
教科書を見ていたって、
綾のことが気になって
全然頭には入ってこないし、
今自分が
どこを読んでいるのかも
わからない。
『読んでいる』というより、
『眺めている』の方が
正しいのかもしれない。
話しかける言葉も
見つからないから
俺は勉強をしようと思った。
そして、
今開いているページの
文章を読んでみて
俺は驚いた。
「あれ?これ去年の教科書だ……」
朝急いで準備したから、
紛れ込んでしまったのかもしれない。
「修君、面白いね!
私もそういうの中学校の頃はあったけど…!」
そう言って
綾が小さく笑った。