消える前に……


部屋を飛び出したところで

俺は大切なことを思い出し、

もう一度

自分の部屋に向かった。


記憶も不十分なところが

多かったので、

少し戸惑ったが、

しっかりと『大切なモノ』を

見つけることができた。


俺はそれを手にとって

もう一度眺めた。


「綾……。
本当にごめんな。」


俺は心の中で言い続けていた言葉を、

思わず口に出して

言ってしまっていた。


俺は指輪に誓ったのに……。


綾に誓ったのに……。


なのに俺は

その誓ったことさえも忘れて、

綾の心を傷つけてしまった。


俺は……


俺は……。


俺は指輪を指にはめようと、

左手の方に近づけた。



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