消える前に……


「俺……やっと思い出した。
やっと綾のこと思い出せた……。」


俺の言葉に綾は

瞳に涙を溜めた。


だけど、

その泣き顔は

さっきの夢の泣き顔とは

全然違った。


「やっと思い出してくれた……。」


綾は

涙を手で拭きながら

そう言った。


「ごめん……俺、
ずっと思い出せなくて……。
綾のことまで忘れるなんて……
俺……最低だ……。」


俺はそう言って、

綾に何度も謝った。


何度でも綾に

謝りたかった。


謝っているとき、

俺は思うんだ。


俺は綾のことを

ちゃんと思い出すことが

できたって。




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