消える前に……


俺は左手を

目の前に持ってきて、

薬指についた指輪を見つめた。


この指輪にも

俺と綾とのたくさんの思い出が

詰まってる。


嬉しいことも、

悲しいことも……。


俺は指輪を見ていて、

綾に誓った言葉を思い出した。


『俺の病気が治ったら結婚しよう』


胸に響いたその言葉が、

心の奥に

熱いものを

こみあげさせた。


俺はこのまま、

何も成長できずに

死んでいってしまうのだろうか…?


みんなにいっぱい迷惑かけて、

迷惑かけっぱなしのままで

死んでいってしまうのだろうか…?


そう考えたら

すごく悲しくなってきた。


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