消える前に……
二人っきりの時間は
少しづつ終わりに近づき、
観覧車は一番下まで降りてきた。
「帰ろっか?」
俺は優しく微笑み、
綾の方に左手を差し出した。
綾は俺の手を
握って歩きだした。
綾の俺の手を握る力は、
朝のときの力より
ずっと強かった。
離したくない、
離れたくないと
言っているように。
だいぶ少なくなった遊園地の中を
俺と綾は手をつないで
ゆっくりと歩いた。
行きに来た道を引き返して、
家に向って歩いて行く。
電車の中ではお互い無言だった。