消える前に……


俺が会社を定年したら、

毎日ずっと

一緒に時間を共にして。


年老いて俺と綾が

おじいさんとおばあさんになったら

二人でいろんなことを思い出しながら

いろんなことを話す。


そして、

普通の最後を迎えて……。


そんな未来を歩きたかった。


そんな風に思ったら、

悲しくなってきて、

目に涙がたまってきた。


「修君!ご飯できたよ!」


綾がそう言って、

両手に皿を持って

俺の方に向かってきた。


「お!やっとできた〜。」


俺は綾に涙を見られないように、

手の甲で涙をぬぐってから、

明るくそう言った。



< 382 / 503 >

この作品をシェア

pagetop