消える前に……
俺が会社を定年したら、
毎日ずっと
一緒に時間を共にして。
年老いて俺と綾が
おじいさんとおばあさんになったら
二人でいろんなことを思い出しながら
いろんなことを話す。
そして、
普通の最後を迎えて……。
そんな未来を歩きたかった。
そんな風に思ったら、
悲しくなってきて、
目に涙がたまってきた。
「修君!ご飯できたよ!」
綾がそう言って、
両手に皿を持って
俺の方に向かってきた。
「お!やっとできた〜。」
俺は綾に涙を見られないように、
手の甲で涙をぬぐってから、
明るくそう言った。