消える前に……


「綾の家まで送ってくよ!」


俺がそう言って

綾に手を差し出すと、

綾は申し訳なさそうに

俺に言った。


「大丈夫だよ!
時間かかっちゃうし。」


「良いんだって!
俺が綾を送っていきたいんだって!」


「そう?じゃあお言葉に甘えて。」


そう言って、

俺の手を握り

二人で歩きだした。


「そういえば、
付き合い始めた頃も
こんなこと言ってたね。」


綾が何気なく呟いた。


帰り道、

綾は楽しそうに

俺に話しかけてきた。


俺はその一つ一つの言葉を

心に刻み込んだ。


これが最後…

俺が綾と楽しく過ごす最後の時間……

もう戻らない最後の……。




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