消える前に……


そんな最後の時間も

俺の心を知らないで、

あっという間に過ぎ去っていく。


すぐに綾の家が見えてきて、

終わりを告げる。


「じゃ、また明日ね。」


綾の家の前まで

送り届けた俺は

綾の手を離し、

そう言った。


最後の綾との

『手をつなげる時間』が

終わった……。


俺は左手を後ろに持っていき、

綾に見えないようにして

強く握り締めた。


もう二度と感じられない

綾のぬくもり。


かすかに手に残る

このぬくもりだけが、

俺に残された物……。


「え…。」


綾は何かに気づいたように

目を見開いた。



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