消える前に……


悲しく、

壊れそうな瞳で…。


俺が綾から視線を外し、

来た道を引き返そうとしたとき

フェンス越しに

綾が俺を抱きしめた。


俺は綾の突然の行動に

動くことができなかった。


動きもしない俺を

綾は強く抱きしめた。


俺は綾を

抱きしめ返したかった。


だけど、

できなかった。


抱きしめ返したら

全部、全部が

なくなってしまいそうだったから。



俺の決意も……


覚悟も……



何もかも……。



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