消える前に……
鞄を取りに
もう一度、部屋に行った。
部屋の床に小さくなって、
倒れた鞄を拾い上げる。
持ち上げた時に、
鞄の中から教科書が落ちた。
「あ……。」
教科書を拾おうと
手を伸ばした時に、
たまたま開かれた教科書のページが
目に入った。
どこにでもあるような
普通の教科書。
だけど、
この教科書は二冊とないもの。
端や教科書の絵の周りに
書かれた落書き。
俺の書いた下手な犬の横に座る
可愛い小動物。
綾が書いた落書きだった…。
懐かしい思い出の一つが
頭の中に蘇る…。